店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 作中作と現実が重なっていく、静かに不穏なミステリーを読みたい時
- 刺さるポイント
- 編集者に届いた原稿が、過去の記憶と女性たちの関係を揺さぶっていく
- 向いている人
- 心理サスペンスや、虚実の境目が曖昧になる物語に惹かれる人
Reading Notes
読みどころメモ
今日は、葉真中顕さんの長編ミステリー『ロング・アフタヌーン』をご紹介します。
物語は、編集者の葛城梨帆のもとへ、一つの小説原稿が届くところから動き出します。送り主は、かつて新人賞で落選した志村多恵。原稿に書かれていたのは、ある女性が学生時代の友人と再会し、死を考えていた心を少しずつ別の方向へ向けていく物語でした。けれどその内容は、梨帆自身の記憶と不穏に重なり始めます。
この作品の面白さは、作中作と現実の境目がゆっくり揺らいでいくところにあります。原稿の中の出来事は、ただの創作なのか。それとも誰かの告白なのか。梨帆は読み手でありながら、いつのまにか物語の内側へ引き込まれていきます。ページをめくるほど、読者もまた、どの声を信じればいいのか分からなくなっていきます。
描かれるのは、犯罪の謎だけではありません。立場の違う女性たちのすれ違い、創作をめぐる嫉妬や承認欲求、長く抱え込まれた怒り。表面上は静かな会話や原稿のやりとりの中に、相手を傷つけたい気持ちと、誰かに理解されたい気持ちが同時に潜んでいます。
葉真中顕さんの社会派作品に比べると、本作はより心理の深い場所へ潜っていく印象があります。大きな事件を外側から追うのではなく、人の心の中にある小さな歪みが、やがて取り返しのつかない選択へつながる過程を見せていきます。
『ロング・アフタヌーン』は、派手なアクションではなく、会話と文章の中で緊張が高まるタイプのミステリーです。虚実が反転していく感覚や、読み終えたあとにもう一度構造を確かめたくなる物語が好きな人におすすめです。
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