店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 密室トリックを、怪しさと論理の両方で楽しみたい時
- 刺さるポイント
- 古い日本家屋や盤上の勝負など、場の条件そのものが謎の核心になっていく
- 向いている人
- 防犯探偵・榎本シリーズの知的な密室ミステリーを読みたい人
Reading Notes
読みどころメモ
今日は、貴志祐介さんの『狐火の家』をご紹介します。
本作は、防犯探偵・榎本径と弁護士の青砥純子が、密室事件に挑むシリーズ第二作です。表題作では、長野の古い日本家屋で殺人事件が起きます。家族が出かけているあいだ、家に残っていた少女が殺害され、現場は外部から侵入できないように見える密室でした。閉ざされた家、限られた時間、疑われる家族。昔話のような題名の雰囲気とは裏腹に、事件は冷静な検証を必要とする論理の迷路として立ち上がります。
この作品集の面白さは、密室という形式を一つの型で済ませないところにあります。古民家、動物、盤上の勝負、そして人間関係。それぞれの短編で、閉じられた場所や条件の意味が変わります。鍵がかかっているから密室なのか。誰も入れないから密室なのか。そもそも何をもって不可能と見なしているのか。榎本は防犯の知識と実地感覚から、その前提を一つずつ崩していきます。
青砥純子の視点があることで、謎解きは専門知識だけの勝負になりすぎません。読者と同じように驚き、疑問を持ち、時には榎本の淡々とした言葉に振り回されながら、事件の形を見直していきます。榎本の人物像も、探偵らしい頼もしさと、どこか信用しきれない危うさが同居しており、シリーズものとしての楽しさがあります。
『狐火の家』は、怪談めいた雰囲気と、本格ミステリーの論理がうまく噛み合った一冊です。貴志祐介さんのホラー作品にある不気味さを少し残しつつ、中心にあるのはあくまで謎の構造を解きほぐす快感です。密室トリックをじっくり考えたい人、防犯探偵・榎本シリーズを続けて読みたい人に向いています。
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