店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 奇妙な出会いから悪夢へ落ちていくミステリーを読みたい時
- 刺さるポイント
- 冴えない主人公の妄想と現実が絡み合い、見えていた物語の形が崩れていく
- 向いている人
- ブラックユーモアと不穏な心理サスペンスをまとめて味わいたい人
Reading Notes
読みどころメモ
今日は、歌野晶午さんの『女王様と私』をご紹介します。
主人公の真藤数馬は、仕事もなく、恋愛にも縁が薄く、自分の生活に閉じこもるように暮らしている人物です。そんな彼が、ある女王様と出会うことから物語は不穏な方向へ動き出します。最初は奇妙でどこか滑稽にも見える関係が、やがて現実感の輪郭を失い、悪夢のような展開へつながっていきます。
この作品では、主人公の視点が大きな読みどころになります。数馬は決して格好のよい人物ではありません。むしろ弱さや身勝手さ、現実から目をそらしたい気持ちを抱えています。その内面が物語の語り口ににじむため、読者は笑っていいのか、怖がるべきなのか分からない居心地の悪さを味わうことになります。
一方で、作品は単なる変わった人物の話にとどまりません。歌野晶午さんらしい仕掛けが、日常のゆがみや主人公の思い込みに入り込みます。見えているものは本当にそのままなのか。語られている出来事はどこまで信用できるのか。そうした疑いが少しずつ積み重なり、物語全体の印象を変えていきます。
本作の面白さは、ブラックユーモアと心理サスペンスの混ざり方にあります。滑稽に見える場面の裏に痛みがあり、痛ましい場面の中にもどこか奇妙な笑いがある。そのバランスが、読者を簡単には落ち着かせません。読み進めるほど、主人公の世界が閉じていく感覚が強まります。
『女王様と私』は、明快なヒーローや爽快な解決を求めるよりも、癖の強い語りと不穏な仕掛けに浸りたい人に向いた一冊です。歌野作品の中でも、悪夢めいた読後感を楽しみたいときに手に取りたい作品です。
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