店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 恋愛の痛さや自意識のこじれを、苦笑しながら見つめたい時
- 刺さるポイント
- 一人の厄介な男性をめぐって、五人の女性の傷と再起が浮かび上がる
- 向いている人
- 恋愛小説の甘さより、人間の未熟さや執着を描く連作が好きな人
Reading Notes
読みどころメモ
今日は、柚木麻子さんの連作小説 『伊藤くん A to E』をご紹介します。
物語の中心にいるのは、伊藤誠二郎という一人の男性です。 容姿に恵まれ、知識もあり、どこか人を惹きつける雰囲気を持っている。 けれどその中身は、幼さと自意識、無神経さを抱えたまま大人になったような人物です。 この作品では、伊藤本人をまっすぐ追うのではなく、彼に振り回される五人の女性たちの視点から、その厄介さと影響力が浮かび上がっていきます。
長く片思いをしてしまう人、好意を向けられて困惑する人、恋愛の経験や年齢への焦りを刺激される人。 彼女たちはそれぞれ違う人生を送っていますが、伊藤という存在によって、自分の弱さや見栄、諦めきれない欲望と向き合うことになります。 伊藤は魅力的な王子様ではありません。 むしろ、関わるほどに傷つき、腹が立ち、なぜこんな人に揺さぶられるのかと自分でも情けなくなるような存在です。
この本の面白さは、恋愛をきれいな成長物語にしすぎないところにあります。 人を好きになる気持ちは、時に自分の価値を相手に預けてしまう危うさを含んでいます。 一方で、痛い経験を通して、自分が本当は何を求めていたのかに気づく瞬間もあります。 五人の女性たちのエピソードは、笑えるほど苦く、苦いからこそ妙に身近です。
恋愛のときめきよりも、こじれた感情や自意識の滑稽さを読みたい人におすすめです。 読み終える頃には、伊藤くんのことよりも、彼に出会ってしまった女性たちがどこへ進むのかのほうが、ずっと気になってくる一冊です。
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