店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 報われない恋や執着の苦しさを、少し距離を置いて見つめたい時
- 刺さるポイント
- 好きという感情が、自分の生活や判断をどこまで変えてしまうのかを鋭く描く
- 向いている人
- 恋愛小説、心理小説、映画化作品の原作を読みたい人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、角田光代さんの『愛がなんだ』をご紹介します。
主人公のテルコは、マモちゃんという男性に夢中です。彼から連絡があれば、仕事中でもすぐに応じ、会えるとなれば予定も生活も後回しにしてしまう。けれど、マモちゃんがテルコに同じ熱量を返してくれるわけではありません。彼女の恋は、相手に愛される幸福よりも、相手を追いかけ続けることで自分を保っているような危うさを帯びています。
この作品が描くのは、きれいに整えられた恋愛ではありません。好きだからこそ相手の都合に合わせてしまう。傷ついていると分かっていても、離れられない。自分でもみっともないと感じながら、それでも気持ちを止められない。テルコの行動には、笑ってしまうような突き抜け方と、胸の奥が冷えるような切実さが同居しています。
周囲の友人たちは、テルコの恋を冷静に見ています。仕事、友情、自尊心。そのどれもが少しずつ削られていく様子は、恋愛の甘さだけではなく、執着が人をどれほど狭い場所へ追い込むかを浮かび上がらせます。一方で、テルコをただ愚かな人物として突き放さないところに、この小説の苦みがあります。誰かを好きになる時、人はいつも合理的ではいられません。
『愛がなんだ』は、片想いの滑稽さと痛みを、淡々とした筆致で見つめる恋愛小説です。恋の高揚よりも、その後ろにある依存や孤独を読み取りたい人に強く響く一冊です。
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