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この棚で手に取りたい理由
要約の冒頭と棚の手がかりから、手に取る理由をまとめました。
- 読みどころ
- 今日は、村山由佳さんの『花酔ひ』をご紹介します。
- 棚のジャンル
- 文学 / 恋愛
- 試し聴き
- 音声レビューで、読む前に作品の雰囲気を確かめられます。
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、村山由佳さんの『花酔ひ』をご紹介します。
この作品は、東京と京都、二組の夫婦をめぐって、欲望と秘密が絡み合っていく長編小説です。東京でアンティーク着物に関わる麻子は、古い着物を譲り受ける縁から、京都の葬儀社で働く正隆と出会います。正隆の妻である千桜、麻子の夫である誠司もまた、それぞれの結婚生活の中で言葉にできない渇きを抱えています。着物という美しい媒介を通して、四人の関係は少しずつ日常の外へ踏み出していきます。
本作の魅力は、恋愛を明るい救いとしてだけ描かないところにあります。誰かを求める気持ちは、愛情にも依存にも、支配にも逃避にもなりえます。登場人物たちは、自分でも説明しきれない欲望に引き寄せられ、結婚という形の中で守ってきた顔を崩していきます。村山由佳さんは、その危うさを刺激的な題材として消費するのではなく、人がなぜ満たされなさを抱えるのかという心理の奥へ踏み込んで描いています。
京都の空気、着物の手触り、葬儀という死に近い仕事の気配が、物語に独特の湿度を与えています。美しいものに触れるほど、隠していた欲望や孤独が浮かび上がる。その対比が印象的です。読み味は大人向けで、穏やかな恋愛小説というより、関係の均衡が崩れていく心理劇として読む作品です。
『ダブル・ファンタジー』以降の村山由佳さんが描く、自由と欲望、結婚と孤独のテーマに関心がある方に向いています。人を愛することのきれいごとでは済まない部分まで見つめる、濃密な一冊です。
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