店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 好きなのに満たされない関係の痛みを、雨の気配ごと読みたい時
- 刺さるポイント
- 誤送信メールから始まる匿名の交流が、行き場のない恋を大きく揺らす
- 向いている人
- 大人の恋愛の苦さや、身体と心のすれ違いを丁寧に描く作品を読みたい人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、一穂ミチさんの『ふったらどしゃぶり When it rains, it pours』をご紹介します。
この作品は、すでに恋人や大切な相手がいる二人が、それぞれの関係の中で満たされない思いを抱えながら近づいていく恋愛小説です。一顕は同棲中の恋人との距離に悩み、整は一緒に暮らす幼なじみへの報われない思いを抱えています。ある日、一顕が送ったメールが手違いで整に届き、互いの正体を知らないまま、二人の奇妙な交流が始まります。
物語の中心にあるのは、好きでいることと、触れ合いたいと願うことのずれです。相手を大切に思っているのに、同じ温度で求め合えない。そばにいるほど孤独が深くなる。そうした大人の恋愛の苦さが、雨の湿度をまとったような空気で描かれます。
一顕と整のやりとりは、逃げ場のない日常に開いた小さな穴のようです。匿名だからこそ言える弱音があり、知らない相手だからこそ届いてしまう本音があります。けれど、言葉が心を近づけるほど、現実の関係や相手を傷つける怖さも濃くなっていきます。
本作は甘いだけの恋愛ではありません。身体の問題、生活を共にすることの難しさ、誠実であろうとしても誰かを傷つけてしまう矛盾を描きます。『ふったらどしゃぶり』は、降り続く雨のようにやまない感情を抱えた人たちが、自分の欲しさと向き合う物語です。苦い読後感を含めて、深く心に残る一冊です。
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