店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 人々の小さな嘘が思いがけず結びつく、連作型のミステリーを味わいたい時
- 刺さるポイント
- 遺影専門の写真館を起点に、別々の人生が風に運ばれるようにつながっていく
- 向いている人
- 仕掛けと人情、喪失と再生が同時に残る物語を読みたい人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、道尾秀介さんの『風神の手』をご紹介します。
物語の中心にあるのは、遺影専門の写真館、鏡影館です。病を抱えた母の撮影のため、藤下歩実は母とともにその場所を訪れます。そこで母が一枚の写真に激しく動揺したことをきっかけに、過去と現在、別々に見えていた人々の人生が少しずつ重なり始めます。
本作は、いくつかの章がゆるやかにつながる構成です。小学生の少年たち、入院中の高齢女性、川沿いの町で暮らす人々。それぞれの物語には、小さな嘘や言えなかった本音が潜んでいます。嘘は誰かを守るためのものでもあり、同時に別の誰かを傷つけるものでもあります。その複雑さを、作品は急いで裁かず、時間をかけて見つめていきます。
風という題名が示すように、登場人物の選択は自分の手を離れ、思わぬ場所まで届いていきます。偶然に見える出会いやすれ違いが、あとから振り返ると必然のように感じられる。そのつながりが見えた瞬間、ミステリーとしての驚きと、人間ドラマとしての温かさが同時に訪れます。
『風神の手』は、暗い秘密を扱いながらも、最後に残るのは冷たさだけではありません。人は過去を完全にはやり直せませんが、誰かの記憶に触れることで、もう一度前を向けることがあります。道尾作品の技巧を楽しみつつ、静かな余韻や救いも味わいたい人におすすめできる一冊です。
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