店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- はっきりした理由はないのに、生活が少しずつ苦しく感じられる時
- 刺さるポイント
- 仕事、夫婦、妊娠、雇用、尊厳の揺らぎを、六つの短編が静かに照らす
- 向いている人
- 現代を生きる人の鬱屈や痛みを、鋭い短編で読みたい人
Reading Notes
読みどころメモ
今日は、朝井リョウさんの短編集 『どうしても生きてる』をご紹介します。
この作品集に描かれるのは、大きな事件ではなく、日々の生活の中で少しずつ人を削っていく痛みです。死んでしまいたいと思うほど苦しいのに、その理由をひとつに決めることはできない。仕事、家庭、妊娠、雇用形態、夫婦の力関係、他人から向けられる視線。六つの短編は、それぞれ違う場所にいる人たちの鬱屈を、静かな緊張感で描いていきます。
登場人物たちは、決して特別に不幸な人ばかりではありません。むしろ、表面上は普通に暮らしている人たちです。けれどその普通の中に、逃げ場のない違和感があります。正社員か派遣かで人を見てしまう自分、夢を諦めたことに名前をつけられない自分、夫婦の関係が少しずつ変わっていくことを受け止めきれない自分。誰にも説明しにくい心のひっかかりが、物語の中で確かな重さを持ち始めます。
朝井リョウの筆致は、ここでも容赦がありません。けれど、痛みを強調して読者を煽るのではなく、人がなぜその場所から動けなくなるのかを丁寧に追っていきます。正しさや前向きさでは片づけられない感情があること、苦しみには必ずしもわかりやすい原因がないことを、本作は短編という形で浮かび上がらせます。
タイトルの「どうしても生きてる」は、希望だけを示す言葉ではありません。それでも朝が来て、仕事に行き、人と関わり、生活を続けてしまう人間のしぶとさと痛みが込められています。読み終えたあと、自分や誰かの沈黙に少し敏感になる一冊です。
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