店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 芸術に身を捧げる人々の嫉妬や沈黙を、濃密なミステリーとして読みたい時
- 刺さるポイント
- 舞台の成功をめぐる熱狂の裏で、兄弟、才能、罪の意識が鋭く絡み合う
- 向いている人
- 芸術家の執念と心理の暗部を描く長編ミステリーが好きな人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、芦沢央(あしざわよう)さんの長編ミステリー『カインは言わなかった』をご紹介します。
舞台となるのは、世界的な芸術監督に率いられたダンスカンパニーです。新作公演の初日を目前に、主役を務めるはずだった藤谷誠が突然姿を消します。誠には、美しい容姿と才能を持つ画家の弟がいます。そして、誠のルームメイトである和馬は、急きょ主役カインの代役に選ばれます。ひとりの失踪をきっかけに、舞台を成立させようとする人々の情熱、焦り、嫉妬がむき出しになっていきます。
この作品は、芸術の世界を華やかな場所としてだけでは描きません。才能を認められたい人、選ばれなかった人、誰かの期待に応えようとして壊れていく人。登場人物たちは、それぞれが舞台の光に引き寄せられながら、その影の中で孤独を深めています。題名にあるカインの物語が示すように、兄弟、罪、沈黙という主題が、現代のダンスカンパニーの緊張感と重なっていきます。
読者は、誠に何が起きたのかを追いながら、同時に「表現のためならどこまで許されるのか」という問いに向き合うことになります。芸術の名のもとに人が削られていく怖さ、沈黙が守ってきたものの重さ、そして嫉妬が人をどこへ連れていくのか。その苦さが深く残る一冊です。舞台ものの熱量と心理ミステリーの暗さを同時に味わいたい人に向いています。
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