店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 欲望と完全犯罪が絡み合う、冷たい企業サスペンスを読みたい時
- 刺さるポイント
- 出世欲にかられた人間たちが、殺人計画を分担するという不穏な構図で進む
- 向いている人
- 東野圭吾さんの初期サスペンスや、計画犯罪ものの緊張感を味わいたい人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、東野圭吾さんの長編ミステリー『ブルータスの心臓』をご紹介します。
物語の舞台は、先端技術を扱う大企業です。能力を評価されながらも、さらに上へ行きたいという野心を抱く男が、ある女性の存在によって自分の将来が揺らぐことを恐れます。やがて関係者たちは、それぞれの利害を守るため、ひとつの殺人計画に巻き込まれていきます。しかもその方法は、犯行を一人で背負わず、複数の人間が役割を受け渡していくというものです。
この作品の面白さは、トリックそのものだけでなく、計画に参加する人間たちの弱さが少しずつ表に出てくるところにあります。誰もが冷静に振る舞おうとしながら、心の奥では疑い、恐れ、裏切りの可能性を計算しています。完全犯罪を目指すはずの仕組みが、かえって人間同士の不信を増幅させていく。その皮肉な構造が、物語全体に張りつめた空気を与えています。
ロボットや企業内の出世競争といった題材には時代性がありますが、欲望に引きずられて判断を誤る人間の怖さは古びていません。合理的に見える人ほど、自分の利益が脅かされた瞬間に視野を狭めてしまう。東野圭吾さんらしい読みやすさの中で、そうした危うさが乾いた筆致で描かれます。
『ブルータスの心臓』は、初期作品らしい硬質なミステリーを楽しみたい人に向いた一冊です。派手な感動よりも、計画犯罪の緊張、疑心暗鬼の心理戦、そして人間の欲望が崩れていく怖さを味わいたいときに手に取りたい作品です。
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