店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 友情や結婚、仕事への違和感を、静かに見つめ直したい時
- 刺さるポイント
- 立場の違う二人の女性を通して、孤独とつながりの脆さを描く
- 向いている人
- 人間関係のすれ違いを、感情の奥行きごと味わいたい人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、角田光代さんの『対岸の彼女』をご紹介します。
物語の中心にいるのは、旅行会社を経営する葵と、専業主婦として日々を過ごす小夜子です。仕事を持ち、自分の足で立っているように見える葵。家庭の中で娘や夫との生活を守りながら、どこか息苦しさを抱えている小夜子。二人はふとしたきっかけで出会い、互いに自分とは違う生き方をしている相手に惹かれていきます。
この作品が描くのは、単純な友情物語ではありません。親しくなったはずの相手と、なぜ分かりあえなくなるのか。励ましの言葉が、どうして時に相手を追い詰めてしまうのか。社会の中で女性に向けられる期待や、結婚、出産、仕事への見えない圧力が、二人の関係に少しずつ影を落としていきます。
葵の過去には、学生時代に出会った少女との濃密な時間があります。小夜子の現在には、母として妻として振る舞いながら、自分の輪郭を見失っていく苦しさがあります。二つの時間が重なることで、物語は「自由に生きること」と「誰かとつながること」の難しさを浮かび上がらせます。
読んでいると、どちらか一方が正しいとは簡単に言えません。強く見える人にも孤独があり、弱く見える人にも譲れない思いがあります。角田光代さんは、その揺れを大げさに裁かず、日常の会話や小さな沈黙の中に置いていきます。
『対岸の彼女』は、友情、孤独、選ばなかった人生へのまなざしを描く長編です。誰かと親しくなることの希望と怖さを、静かな痛みとして残す一冊です。
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