店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 大切な人を失ったあと、もう一度前へ進む物語に触れたい時
- 刺さるポイント
- ロードバイクと不思議な世界を通して、喪失からの再生を描く
- 向いている人
- ファンタジーの設定に、深い家族愛と成長の物語を求める人
Reading Notes
読みどころメモ
今日は、森絵都さんの長編小説 『ラン』をご紹介します。
主人公の環は、十三歳のときに交通事故で家族を失いました。 その後、唯一の肉親だったおばさんも亡くなり、 彼女は大切な人を次々に失った痛みを抱えたまま生きています。 そんな環が、ある自転車屋との出会いをきっかけにロードバイクを手にし、 走ることの感覚を覚えていきます。 風を切り、体を使い、前へ進む。 その単純な動きが、止まったままだった環の時間を少しずつ動かし始めます。
やがて環は、自転車に乗ったまま不思議な世界へ迷い込みます。 そこには、死んだはずの家族が暮らしていました。 会いたかった人にまた会えるという喜びは、同時に、 もう戻れない現実を突きつける苦しさでもあります。 環は、失った家族への思いと、今を生きる自分の足元とのあいだで揺れながら、 何のために走るのかを探していきます。
この作品は、喪失を扱いながらも、沈み込むだけの物語ではありません。 ロードバイクの疾走感、不思議な世界のやわらかな空気、 周囲の人々との出会いが重なり、読み心地には前へ進む力があります。 悲しみを忘れることではなく、悲しみを抱えたまま今日を選び直すこと。 その難しさと尊さが、環の走る姿に込められています。
タイトルの『ラン』は、走ることそのものを示しながら、 人生をもう一度動かす合図のようにも響きます。 止まっていた心が、少しずつ速度を取り戻す。 『ラン』は、家族を失った少女が、過去への思いを手放すのではなく、 それを胸に抱いたまま未来へ向かう、切実であたたかな一冊です。
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