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落日 表紙

落日

2026年5月27日 更新

今日は、湊かなえさんの『落日』をご紹介します。

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店頭POP

今の気分に合う一冊かも

気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。

こんな時に
過去の事件と創作することの責任を重ねた重厚なミステリーを読みたい時
刺さるポイント
映画監督と脚本家が十五年前の一家殺害事件を追ううちに、真実と救いの形が揺らいでいく
向いている人
衝撃だけでなく、祈りや再生の余韻が残る長編を求める人

Reading Notes

読みどころメモ

音声レビューの要点

今日は、湊かなえさんの『落日』をご紹介します。

物語は、新人脚本家の甲斐千尋が、映画監督の長谷部香から新作の相談を受けるところから始まります。香が撮ろうとしているのは、十五年前に起きた一家殺害事件です。兄が妹を殺し、家に火を放って両親も命を落としたとされるその事件は、千尋の生まれ故郷にも関わっていました。すでに判決が確定した過去の事件を、なぜ今あらためて映画にするのか。その問いが、二人を深い闇へ引き込んでいきます。

本作の読みどころは、真相を追うミステリーであると同時に、過去の痛みを物語にすることの重さを描いている点です。事件には被害者がいて、遺族がいて、沈黙を選んできた人がいます。誰かの人生を作品として扱うことは、救いになるのか、それとも別の傷を開く行為なのか。千尋と香が調べるほど、その境界は簡単に決められなくなっていきます。

湊かなえさんらしく、物語は一方向には進みません。記録に残った事実、当時の記憶、関係者が抱えてきた後悔が重なり合い、事件の見え方は少しずつ変わります。強い衝撃を伴う題材でありながら、中心にあるのは断罪だけではありません。取り返しのつかない過去を前に、人はどう生き直せるのかという問いが、終盤に向かって静かにせり上がってきます。

『落日』は、重い事件を扱いながらも、ただ暗い読後感だけで終わらない長編です。真実を知ること、表現すること、誰かを悼むことの意味をじっくり考えたい人に向く一冊です。

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