店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 奇妙な能力と物語の入れ子構造を、ポップに楽しみたい時
- 刺さるポイント
- 未来の断片を見る教師と、猫好きの二人組が登場する小説原稿が、現実の痛みと再生をつないでいく
- 向いている人
- 少し不思議で、苦みの先に優しさが残るエンタメを読みたい人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、伊坂幸太郎さんの『ペッパーズ・ゴースト』をご紹介します。
この作品は、他人の未来の断片を見てしまう中学教師を軸にした、少し不思議なエンターテインメント小説です。主人公の檀は、教師としての日常を送りながら、望んだわけではない力によって、人のこれからを垣間見てしまいます。その能力は便利なようでいて、見えたものをどう受け止めるかという重さを彼に突きつけます。
物語には、猫を愛する二人組が登場する小説原稿も差し込まれます。最初は現実とは別の物語に見えるそのパートが、檀のいる世界と少しずつ響き合っていくところが読みどころです。現実、創作、未来の断片が重なり、どこまでが偶然で、どこからが選択なのかを考えさせます。
伊坂作品らしく、会話には軽さがあり、設定には遊び心があります。ただし、作品の奥には、失敗や後悔を抱えた人が、それでも今できることを選ぼうとする切実さがあります。未来が見えるとしても、人生が単純に救われるわけではありません。だからこそ、人物たちが小さく踏み出す場面に温度が生まれます。
読後感は、にぎやかな仕掛けの楽しさと、苦みを含んだやさしさが同居しています。特殊能力ものとしての面白さ、教師と生徒をめぐる人間ドラマ、物語を読むこと自体へのまなざしが重なり、ジャンルを一つに絞りにくい魅力があります。
『ペッパーズ・ゴースト』は、奇妙な設定の中に、人が過去を抱えたまま前へ進む力を描いた一冊です。伊坂幸太郎さんの新しめの作品を、軽さと深さの両方で味わいたい人におすすめです。
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