店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 謎解きと仕事の物語を、静かで深い余韻とともに味わいたい時
- 刺さるポイント
- 建築家が設計した家から家族が消え、残された椅子が人生と創作の問いを照らす
- 向いている人
- 警察小説以外の横山作品や、ものづくりに人生を賭ける人の物語を読みたい人
Reading Notes
読みどころメモ
今日は、横山秀夫さんの『ノースライト』をご紹介します。
主人公の青瀬稔は一級建築士です。彼は、施主からすべてを任される形で信濃追分に一軒の家を設計します。ところが、完成したはずのその家に住む家族の姿はありません。生活の気配が消えた空間に残されていたのは、一脚の古い椅子だけでした。家族はどこへ行ったのか。なぜ椅子だけが残されたのか。青瀬は、自分が作った家の謎と向き合うことになります。
この作品はミステリーでありながら、警察捜査の物語ではありません。中心にあるのは、建築という仕事です。依頼主の思いをどう受け止めるのか。自分の設計は誰のためのものなのか。青瀬が家の秘密を追う過程は、そのまま彼自身の仕事への向き合い方を問い直す旅でもあります。
物語には、家族、創作、才能、師弟関係、そして過去に残してきた痛みが重なります。北から入るやわらかな光を意味する題名のように、謎は暗いだけではありません。失われたものを照らし、見ないようにしてきた感情を浮かび上がらせる光でもあります。横山秀夫さんの硬質な筆致はそのままに、静かで美しい余韻が広がります。
青瀬の周囲には、建築事務所の現実やコンペをめぐる緊張もあります。理想だけでは仕事は続かず、仕事だけでは人生は満たされない。そのはざまで、青瀬は自分が本当に作りたかったものを探していきます。家という器を通して、人がどこに帰り、何を支えに生きるのかが描かれます。
『ノースライト』は、横山秀夫さんの別の面を味わえる長編です。強い事件性よりも、謎が人の人生を照らしていく過程に惹かれる作品です。ものづくりに関わる人、仕事の意味を考えたい人、静かな感動を残すミステリーを読みたい人におすすめです。
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