店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 青春のまぶしさよりも、孤独や執着の暗さに踏み込みたい時
- 刺さるポイント
- 姿の見えない存在を追うゲームが、片想いと連続する事件を静かに結びつけていく
- 向いている人
- 辻村深月さん初期の濃密な青春ミステリーを読みたい人
Reading Notes
読みどころメモ
今日は、 辻村深月さんの長編小説、 『子どもたちは夜と遊ぶ(上)』についてお話しします。
物語は、大学受験を控えた高校三年生の失踪から始まります。 家出なのか、事件なのか。 周囲がざわめく中で、木村浅葱だけは、その出来事の裏側にあるものを知っています。 彼の前にちらつくのは、姿を見せない謎の存在「i」です。 浅葱は「i」に近づくため、自分自身を危ういゲームの中へ差し出していきます。
上巻で描かれるのは、若さのきらめきよりも、その陰に沈む孤独です。 同じ大学に通う仲間たち、届かない恋心、言葉にできない嫉妬や依存。 誰かを大切に思う気持ちは、時に相手を救う力になりますが、ここではその気持ちが少しずつねじれていきます。 人に触れたいのに、うまく触れられない。 自分を守ろうとするほど、誰かを傷つけてしまう。 そんな未熟さが、物語全体に痛みを与えています。
この作品の魅力は、事件の謎だけで読ませるのではなく、登場人物たちの心の暗がりを丁寧に見せていくところにあります。 浅葱の行動には危うさがあり、簡単に共感できるものではありません。 それでも、その奥にある寂しさや渇望が見えてくるため、読者は彼を突き放しきれないままページを進めることになります。
上巻は、物語の核心をすぐには明かしません。 むしろ、何気ない会話や視線のずれの中に、不穏な気配を積み重ねていきます。 恋愛、友情、家族、殺意。 それぞれの感情がまだ別々に見えていたものが、少しずつ同じ闇へ流れ込んでいく。 その緊張感が、下巻へ強く引き込む一冊です。
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