店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 記憶と恋の境界が曖昧になる、静かなSF恋愛小説を読みたい時
- 刺さるポイント
- 植えつけられた青春の記憶と、実在しないはずの幼馴染との再会が喪失の意味を変えていく
- 向いている人
- 切ない恋愛、記憶改変SF、嘘と本当が重なる物語が好きな人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、 三秋縋さんの作品、 『君の話』 についてお話しします。
この作品の主人公、天谷千尋には、不思議な記憶があります。 親しい友人もなく、家族とも距離を置いて暮らしている彼の中には、一度も会ったことがないはずの幼馴染との青春の記憶が存在していました。 架空の夏、架空の時間、架空の少女。 それは記憶改変技術によって植えつけられた「義憶」であり、現実には存在しないもののはずでした。 ところがある夏の日、千尋の前に、その記憶の中にいた少女、夏凪灯花が現れます。
物語は、ありえない再会をきっかけに、記憶と現実の境界を静かに揺らしていきます。 彼女は本当に存在しているのか。 千尋が覚えている青春は、ただの作り物なのか。 たとえ作り物だとしても、それによって心が動き、誰かを大切に思った時間まで偽物と言えるのか。 本作は、そうした問いを、恋愛小説の形で丁寧に描いていきます。
読みどころは、SF的な設定が感情の問題に深く結びついているところです。 記憶を書き換える技術は便利な道具ではなく、人が何を忘れ、何を覚えていることで自分自身でいられるのかを問いかける装置として働きます。 千尋と灯花の関係には、甘いだけではない喪失の気配があります。 けれど、その喪失があるからこそ、二人の時間はより鮮やかに感じられます。
『君の話』は、始まる前から終わっていた恋をめぐる物語です。 記憶が作り物でも、そこに宿った感情は消えないのかもしれない。 そんな切なさと優しさが、読後に長く残ります。
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