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蹴りたい背中 表紙

蹴りたい背中

2026年5月27日 更新

今日は、綿矢りささんの芥川賞受賞作『蹴りたい背中』をご紹介します。

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店頭POP

今の気分に合う一冊かも

気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。

こんな時に
青春のまぶしさより、教室の端にある孤独や違和感を読みたい時
刺さるポイント
余り者同士の近さと反発を通して、好きとも友情とも言い切れない感情を描く
向いている人
芥川賞作品、十代のぎこちなさ、尖った青春小説に触れたい人

Reading Notes

読みどころメモ

音声レビューの要点

今日は、綿矢りささんの芥川賞受賞作『蹴りたい背中』をご紹介します。

主人公のハツは、高校に入ったばかりの女の子です。新しいクラスの中でうまく輪に入れず、周囲の明るさや仲良しごっこから少し距離を置いています。そんな彼女が意識するようになるのが、同じように教室で浮いている男子、にな川です。彼は人気モデルのオリチャンに夢中で、その熱量は周囲から見れば少し奇妙にも見えます。

ハツとにな川は、似た者同士のようでいて、すぐに分かり合える関係ではありません。孤独を抱えているからこそ近づくのに、相手の弱さや滑稽さを見ると苛立ってしまう。近くにいたいのか、突き放したいのか、自分でもわからない。その曖昧な感情が、タイトルにもある乱暴な衝動として表れます。青春小説と聞いて思い浮かべる爽やかさよりも、もっとざらついた教室の空気がここにはあります。

この作品の魅力は、十代の心をきれいにまとめすぎないところです。友だちがほしいのに、群れることには耐えられない。誰かに特別だと思われたいのに、相手を素直に認めることもできない。ハツの語りには未熟さや刺々しさがありますが、その不安定さがとても生々しく、読者の記憶の中にある教室の居心地悪さを呼び起こします。

『蹴りたい背中』は、短く読みやすい一方で、読後に残る感情は単純ではありません。恋愛、友情、共感、嫌悪のどれにも収まりきらない関係を通して、人と近づくことの不器用さを描いています。明るい青春物語では物足りない人や、十代の孤独を真正面から味わいたい人に向いた一冊です。

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