店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 失恋や疲れから離れて、心をやわらかく立て直したい時
- 刺さるポイント
- ふるさとの川辺に戻ったほたるが、人との縁と忘れていた記憶に導かれて回復していく
- 向いている人
- 再生の物語、ふるさとを舞台にした小説、静かな癒しの読後感を求める人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、吉本ばななさんの『ハゴロモ』をご紹介します。
主人公のほたるは、失恋の痛みと都会での疲れを抱え、ふるさとの町へ戻ってきます。そこには大きな川が流れ、時間の進み方も、人との距離も、都会とは少し違っています。ほたるはその町で暮らし直すうちに、自分が失ってきたもの、忘れていたもの、まだ心の奥に残っていた記憶にゆっくり触れていきます。
この作品では、回復がとても静かに描かれます。誰かが大きな答えを与えてくれるわけではありません。けれど、川のある風景、手を温める小さなもの、ふいに出会う人、土地に流れる不思議な気配が、ほたるの心を少しずつほぐしていきます。傷ついた心は、一気に元通りになるのではなく、眠っていた感覚を取り戻すように動き始めます。
赤いダウンジャケットの青年との出会いも、物語にやわらかな光を差し込みます。恋愛の予感がありながら、それだけに閉じないところがこの作品の魅力です。人と人は、はっきりした理由がなくても引き寄せられることがあります。たまたまの出会いに見えても、あとから振り返ると、その時の自分に必要な縁だったのかもしれない。そんな感覚が、全体を包んでいます。
『ハゴロモ』は、派手な事件で読ませる小説ではありません。むしろ、疲れた心がふるさとの空気に触れ、ふわりと羽織るものを受け取るような物語です。失恋のあと、生活に疲れた時、どこかへ戻って自分を整えたい時に、静かに寄り添ってくれる一冊です。
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