店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 他人とうまくつながれない人の再生を、強い個性の物語で読みたい時
- 刺さるポイント
- 顔の部品を並べるように、人との距離や愛の感覚が組み直されていく
- 向いている人
- 変わった主人公に戸惑いながら、最後には深く寄り添いたい読者
Reading Notes
読みどころメモ
今日は、西加奈子さんの『ふくわらい』をご紹介します。
主人公の鳴木戸定は、書籍編集者として働く女性です。彼女は幼いころの強烈な体験をきっかけに、自分と世界との間に見えない壁を感じながら生きてきました。感情を大きく表に出すことは少なく、人との距離の取り方も不器用です。そんな定の数少ない趣味が、暗闇の中で顔のパーツを並べる「ふくわらい」。顔という、人が他者を判断する大きな手がかりを、彼女は自分だけのやり方で組み替え続けます。
物語が動き出すのは、定がプロレスラーや盲目の男性と出会い、彼らのまっすぐな言葉や身体性に触れていくところからです。定は簡単には変わりません。誰かに優しくされたからといって、すぐに世界を信じられるわけでもありません。それでも、自分の内側だけで完結していた感覚が、少しずつ外へ開かれていきます。人の顔を見ること、人の声を聞くこと、人の身体がそこにあると感じること。その一つひとつが、定にとっては大きな出来事になります。
この作品は、奇抜な設定や強い言葉づかいが印象に残りますが、中心にあるのは愛情をどう受け取ればいいのか分からない人の物語です。感想でも、主人公の個性に最初は戸惑いながら、読み進めるほどまっすぐさや痛みに引き込まれたという受け止め方が多く見られます。笑いと違和感の先に、他者とつながることの怖さと喜びが浮かび上がります。
『ふくわらい』は、普通であることから少し外れた場所にいる人物を、力強く肯定する一冊です。人とうまく関われないことを欠点として切り捨てず、その人だけの感覚が世界へ触れていく瞬間を見届けたい人におすすめです。読む側もまた、自分が当然だと思っている顔や愛や優しさの形を、少し揺さぶられるはずです。
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