店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 家族の歴史と初恋を、自然の匂いまで感じながら読みたい時
- 刺さるポイント
- 安曇野の自然の中で育つ少年と、同い年の親戚の少女との関係が、家族の根をたどる物語へ広がる
- 向いている人
- 血縁、土地、成長、忘れがたい恋が絡む物語が好きな人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、小川糸さんの『ファミリーツリー』をご紹介します。
本作の舞台は、長野県安曇野の豊かな自然に囲まれた土地です。そこで生まれ育つ少年は、同い年でありながら親戚関係では少し複雑な位置にいる少女と出会います。近くにいるのに、ただの幼なじみとは言い切れない。家族の枝分かれの中で結ばれた二人の距離が、物語の始まりにあります。
小川糸さんらしく、風景や食べもの、草木の気配が丁寧に描かれます。安曇野の空気は背景として置かれているだけではなく、登場人物たちの記憶そのもののように物語へ染み込んでいます。子どものころの感覚、家の中に残る匂い、大人たちの会話から少しずつ知っていく過去。少年の目に映る世界が広がるにつれ、家族というものの大きさとややこしさも見えてきます。
タイトルのファミリーツリーは、単なる家系図ではありません。誰かと誰かが出会い、別れ、守り、傷つけ、それでも次の世代へ何かを渡していく。その枝葉の先に自分がいるのだと気づく物語です。恋のきらめきだけでなく、土地に根を張るような時間の厚みがあるため、読み進めるほど人物たちの選択が静かに重みを持ってきます。
『ファミリーツリー』は、家族をまっすぐ温かいものとしてだけ描く作品ではありません。近いからこそ苦しいこともあり、遠いからこそ見えてくる愛情もあります。初恋の痛みと、血縁の物語がゆるやかに絡み合う、しっとりした長編を読みたい時に手に取りたい一冊です。
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