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動機

2026年5月27日 更新

今日は、横山秀夫さんの『動機』をご紹介します。

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店頭POP

今の気分に合う一冊かも

気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。

こんな時に
短編の鋭さで、警察と人間心理の重さを味わいたい時
刺さるポイント
手帳紛失、殺人依頼、記者の取材、公判の失態が、それぞれ別の職務倫理を突きつける
向いている人
短い物語の中で、組織と個人のずれが反転するミステリーを読みたい人

Reading Notes

読みどころメモ

音声レビューの要点

今日は、横山秀夫さんの『動機』をご紹介します。

この作品は、警察、報道、司法といった職務の現場を切り取りながら、人がなぜその行動を選ぶのかを追い詰めていく短編集です。表題作の舞台は警察署です。署内で一括保管されていた三十冊の警察手帳が忽然と消え、内部の誰かが関わったのか、外部からの侵入なのか、組織の疑心暗鬼が広がっていきます。

事件そのものは小さく見えます。けれど、警察手帳は警察官の身分と誇りを示すものです。それが失われた時、組織は体面を守ろうとし、関係者は自分の立場を守ろうとします。真相を探る過程で浮かび上がるのは、単純な犯人探しではなく、職場の空気、過去の傷、そして人が隠してきた感情です。

収録作はそれぞれ異なる題材を扱います。殺人依頼の電話に揺れる男、取材源との関係に苦しむ記者、法廷での一瞬の失態に追い込まれる裁判官。どの物語にも、外から見れば説明しづらい行動があります。その理由をたどるうちに、読者は「動機」という言葉の重さを何度も考えることになります。

横山秀夫さんの短編は、結末の驚きだけで読ませるタイプではありません。むしろ読みどころは、登場人物が守ろうとする一線にあります。仕事上の責任、過去への後悔、誰にも言えない弱さ。小さなほころびが大きな選択につながり、最後には人間の輪郭がくっきりと立ち上がります。

『動機』は、横山作品の硬質な魅力を短い時間で味わえる一冊です。警察小説の緊張感がありながら、中心にあるのは人の心の見えにくさです。なぜその人はそうしたのか。その問いが、読み終えたあとにも静かに残ります。

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