『ハサミ男』は叙述トリックとして面白い?ネタバレなしで読む前に知りたいこと
殊能将之『ハサミ男』を読む前に知りたい、怖さ、語りの不穏さ、叙述トリックとしての魅力をネタバレなしで整理します。
目次 7セクション
『ハサミ男』は、ネタバレなしで紹介するのが難しいミステリーです。
どこが仕掛けなのかを詳しく語るほど、初読の面白さを削ってしまいます。とはいえ、読む前に「どんな怖さなのか」「自分に合う作品なのか」は知っておきたいところです。
この記事では、『ハサミ男』を叙述トリック系ミステリーとして読む前に知っておきたいことを、核心には触れずに整理します。
この記事のポイント
- 連続殺人犯が、自分の手口をまねた別の事件を追う倒錯した設定
- 怖さの中心は残酷描写だけでなく、語り手を信じきれない不安にある
- 叙述トリックを知っていても、細部の置き方と読後の再読感が楽しめる
『ハサミ男』はどんな小説か
物語の中心にいるのは、世間を騒がせる連続殺人犯、通称ハサミ男です。
ところが、次の標的として考えていた少女が、自分と同じ手口で殺されてしまいます。自分の犯行ではない。では、誰が、何のために同じ方法を使ったのか。
犯人であるはずの人物が、別の犯人を追い始める。このねじれた構図が、『ハサミ男』の入口です。
面白さ1:犯人を追う側と追われる側が入れ替わる
通常のミステリーでは、探偵や警察が犯人を追います。
『ハサミ男』では、その構図が最初から少し歪んでいます。犯罪者の視点があり、警察の捜査があり、事件に関わる人々の違和感が重なっていく。誰の言葉をどこまで信じていいのか、読者は落ち着く場所を失います。
この不安定さが、叙述トリックの土台になっています。物語は奇抜な設定だけで走るのではなく、読者が自然に補ってしまう前提を少しずつ利用していきます。
面白さ2:怖さが心理とユーモアの間にある
『ハサミ男』には、題材としての不穏さがあります。連続殺人、模倣、死への執着。苦手な人は無理に読む必要はありません。
ただし、作品の怖さは残酷さだけではありません。語り手の冷静さ、どこかずれたユーモア、日常の会話の中に混じる危うさが、じわじわ効いてきます。
怖いのに、どこか奇妙に読ませる。笑っていいのか分からない場面がある。そうした温度差が、物語全体を不安にします。
怖さの種類
- 猟奇的な事件を扱う題材の重さ
- 語り手の認識を信じきれない心理的な不安
- ブラックユーモアが混じることで生まれる落ち着かなさ
叙述トリックとして読む時の注意点
叙述トリックと聞くと、最後にだまされるかどうかだけを期待しがちです。
でも『ハサミ男』は、結末の驚きだけでなく、そこへ向かう語りの調整が面白い作品です。何が書かれていて、何が書かれていないのか。誰の言葉を当然のものとして受け取っているのか。読み終わってから振り返ると、序盤の何気ない部分に別の意味が見えてきます。
初読では、すべてを見抜こうとするより、少し違和感を持ちながら物語に乗るほうが楽しめます。
どんな人に向いているか
| 読みたいもの | 向き不向き | 理由 |
|---|---|---|
| 叙述トリックの切れ味 | 向いている | 読者の前提を利用する構成を楽しめる |
| 明るい謎解き | あまり向かない | 題材と語り口に不穏さがある |
| 心理のねじれたミステリー | 向いている | 犯人側と捜査側の境界が揺れる |
人間の暗さや倒錯した設定が苦手な人には、重く感じるかもしれません。反対に、語りの違和感、ブラックユーモア、読後に読み返したくなる仕掛けを求める人には相性がいい作品です。
よくある質問
FAQ
『ハサミ男』はグロいですか?
猟奇的な事件を扱うため、題材としての重さはあります。過度に刺激だけで押す作品ではありませんが、残酷な事件が苦手な人は読むタイミングを選んだほうがいいです。
叙述トリックだと知っていても楽しめますか?
楽しめます。仕掛けの存在を知っていても、どこに前提が置かれているのか、読み終えたあとにどう見え方が変わるのかが面白い作品です。
ミステリー初心者にもおすすめですか?
初心者でも読めますが、明るい入門作ではありません。怖さや不穏さが苦手なら、先に軽めの本格ミステリーから読むほうが合う場合があります。
まとめ
『ハサミ男』は、連続殺人犯が別の犯人を追うという倒錯した設定から始まる、仕掛けの強いミステリーです。
怖さは事件の残酷さだけではなく、語り手を信じきれない不安、読者の前提が静かに利用されていく感覚にあります。叙述トリックとしての驚きを味わいたい人、心理のねじれたミステリーを読みたい人には、強く残る一冊です。
できれば、詳しい解説を読む前に本編へ進んでください。読み終えたあとに、最初のページへ戻りたくなるタイプの作品です。

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